なぜRove SSはこの形になったのか。普段着とフィールドウェアをつなぐ設計
アウトドアウェアには、理由のある形があります。
腕を上げやすくするための立体的なパターン。汗を逃がすための素材。収納を増やすためのポケット。山で使う道具として考えれば、どれも合理的です。
ただ、その合理性が強くなるほど、日常では少し使いづらくなることがあります。
山へ行かない日に着るには少しアウトドア感が強い。カットパターンやディテールが、普段着としては過剰に感じる。結果として「山用」と「普段用」がクローゼットの中で分かれていく。
Rove SS Check Shirtsでは、そこを逆から考えました。
山で使えるシャツを普段着に寄せるのではなく、まず普段着として自然に手が伸びる形を作り、その中に行動を妨げない機能を入れる。
一着が担える範囲が広がれば、クローゼットも、持ち歩く装備も、少しミニマルにできるのではないか。
Rove SSの形は、その考えから決まっていきました。

Rove SSを作った背景そのものについては、以前の記事
「山と街の間を歩くために Rove SS Check Shirtsを作った理由」
でも紹介しています。今回はそこから一歩進んで、「なぜこの形・仕様にしたのか」を掘り下げます。
アウトドアウェアを普段着に寄せる、ではなかった
目指したのは、アウトドアウェアらしい機能を残したまま街向けに見せることではありません。
スタート地点はあくまで「普段着として使いやすいこと」です。
仕事へ行く日。車を運転する日。近所へ出る日。山へ向かう日。そのどれか一つのためだけに服を分けるのではなく、同じ一着が自然につながっていくこと。
そのため、見た目はチェックの半袖シャツとして成立させています。肩の落ち感も今の普段着に馴染むバランスにし、極端にテクニカルなカッティングは表に出していません。
一方で、身体を動かしたときにシャツが邪魔にならないことは譲れませんでした。
ノンストレッチの布帛だから、パターンで動きを作る

Rove SSに使っているのは、ポリエステル65%・レーヨン35%の布帛です。ストレッチ素材ではありません。
だから細く作れば、腕を上げたときや身体をひねったときに生地が引っ張られます。逆に、動きやすさだけを求めて全体を大きくすれば、普段着としてのバランスが崩れてしまいます。
そこで身幅には適度なゆとりを持たせながら、袖にはピボットスリーブを採用しました。
見た目の大きさだけで可動域を作るのではなく、袖付けのパターンそのものでも身体の動きについてくるようにする。
「普段着としてどう見えるか」と「動いたときにどう機能するか」。この二つのフィルターを通して、今のシルエットを作っています。
薄すぎないチェック生地。着ていく時間も含めて考える

夏のアウトドアウェアでは「薄い」「軽い」は分かりやすい性能です。
Rove SSでは、そこだけを追いませんでした。
薄すぎない布帛にすることで、一枚で着たときにも頼りなさがなく、Tシャツやロングスリーブの上からもさっと羽織ることができます。それでいてポリエステル比率を高めることで、汗をかいた後の乾きやすさも持たせています。
もう一つ大切にしたのが、生地の表情です。
チェック柄の中にネップの表情があり、着て、洗って、使い込んでいくことで少しずつ雰囲気が変わっていく。新品の瞬間だけを完成形にするのではなく、普段着として使う時間そのものも楽しめる生地を選びました。
数値だけでは測りにくい部分ですが、毎日着る服なら、こうしたエージングも一つの性能だと考えています。
襟は、見た目だけではなく小さな装備

Rove SSの襟は、寝かせて着れば普通のチェックシャツとして見えます。
一方で、少し立ち上げやすい形にもしています。
日差しが強いときには首の後ろを覆う。風が出たときには簡単な風防になる。上からジャケットを羽織ったときには、襟を立てることで首裏へ上着の生地が直接触れる不快感も減らせます。
新しいパーツを付け足すのではなく、昔からシャツにある「襟」という構造の使い方を少し広げる。
普段着の顔を崩さずに機能を持たせるという、Rove SSの考え方がよく出ている部分です。
3つのポケットは、バッグを開ける回数を減らすため

Rove SSを特徴づけているのが、胸と両脇に設けた3つのポケットです。
携行食。スマートフォン。行動中に出た小さなゴミ。歩いている途中ですぐ使いたいものを、まずシャツに入れる。
山を歩いていると、ほんの小さな物を取り出すためにバックパックやショルダーバッグを開ける場面が意外とあります。
その回数を少し減らしたい。
両脇のポケットは、バックパックのウエストベルトにも干渉しづらい位置を意識しています。バッグを背負っていてもアクセスしやすく、必要な物にすぐ手を伸ばせるようにしました。

そして、これは山だけの話ではありません。
普段の外出でもスマートフォンや小物程度ならシャツへ。なるべく手ぶらで動き、多機能なバッグにすべてを任せない。
着ている服そのものに、少しだけ装備としての役割を持たせています。
スリットにも、少しだけ遊びを残す

裾のサイドスリットは、歩いたときや身体を動かしたときの自由度を作るためのものです。
ただ、機能だけで終わらせませんでした。
前身頃を後身頃側へ少し隠すような構造にし、動いたときにも内側が見えすぎないようにしています。ドレスシャツのように長くしすぎず、かといって短すぎない。その中間を狙った着丈とスリットです。
合理性だけで服を作ると、正しくても少しつまらなくなる。
服は道具であると同時に、着ることそのものを楽しむものでもあります。
目立つ装飾ではありませんが、着ているうちにふと気づく。そのくらいの遊びを残しました。
バッグより先に、シャツのポケットへ

Rove SSで目指したのは、「山で使える普段着」です。
山用の装備を増やしていくのではなく、普段から着ているシャツ自体が少しだけ装備になる。
身体を動かせる袖。汗をかいても乾きやすい生地。首を守れる襟。すぐ手が届く3つのポケット。
それでも、見た目はチェックの半袖シャツです。
仕事へ行く日も、車を運転する日も、近所へ出る日も、山を歩く日も。同じ一着を使うことができれば、必要な服も、持ち歩く装備も少し減らせます。
身につけるバックパックやショルダーバッグ、ウエストバッグを開ける回数を最低限にする。持つものそのものも、なるべく最低限にする。
バッグよりも先に、シャツのポケットへ。
普段着として使いやすい形と、行動に必要な機能。その二つをどちらかに寄せるのではなく、一着の中で共存させる。
YM Rove SS Check Shirtsは、日常とフィールドの境目を少し小さくするために、この形になりました。
YM Rove SS Check Shirts
GREY CHECK / NAVY CHECK
MADE IN JAPAN
¥15,900(税込)

